地下室の手記

獄中日記

地下室の手記 13枚目

「開錠!」 威勢のいい掛け声で扉が開く。警察官が手錠を持って立っていた。 「取り調べするから」 昨日深夜まで及んだ取り調べというものは、精々私の身の上を語っているに過ぎず、事件そのものの細かい話はしていなかった。私が留置場で生活する上で、徐々…

地下室の手記 12枚目

「じゃあ、部屋を変わろうか」 再び眼鏡の警察官に言われた。 この4畳の狭苦しい部屋が自分に充てられた部屋だと思っていた。 あまり名残惜しくも無いが、一々毛布を持って移動するのも面倒だった。 新しい部屋は6号室で3人部屋だった。3人になったからと言…

地下室の手記 11枚目

「君に弁護士をつけることができる」 そのように眼鏡をかけた警察官は言った。 弁護士か。彼女に罵声を浴びせたLINEの文面は、逮捕された時に私が指さしたものの写真を撮られている。何を弁護するというのだろう。 ただ、私はこの事件がとても大きな有罪判決…

地下室の手記 10枚目

飯も食べた。洗顔もした。髭も剃って、風呂も入った。 それでもまだ午前10時を回ったくらいだった。 何を、すればいいのだろうか。 これが一体いつまで続くのか、考えられなかった。 1日を乗り切ることすらできる自信が無かった。 家にいたら退屈でも退屈な…

地下室の手記 9枚目

「自弁頼む?」 知らない言葉を当たり前のように使わないで欲しい。 詳しく聞くと、お金を払うことでお昼ご飯をグレードアップさせることができる様だ。 こんな逮捕された直前に昼飯を良いものを食べようと考える奴がいるのだろうか。呑気なものだ。 その他…

地下室の手記 8枚目

「今日は風呂の日だから」 そう警察官が言った。「今日は」という言葉で察するものがあった。 この留置場では月曜日と金曜日に風呂に入ることが出来る。私が逮捕されたのは月曜日だったため、初日に入ることができた。 自分のタオルと、洗顔の時に使った石鹸…

地下室の手記 7枚目

「運動の時間だよ」 そう言って警察官は施錠されている檻を開けた。 運動と言われても運動をする様なスペースも無ければすることもなかった。 聞いてみると、裏口のような場所に出て運動をするらしい。 運動は何をすればいいのかと頭の悪い質問をしたが、返…

地下室の手記 6枚目

午前7時、電気が点いたことが起床の合図となった。 あまり眠れてはいない。普段家にいる時は昼まで寝ていた自分だが、人前だときちんと起きる人間なので、何とか目覚めて立ち上がる。 それぞれの部屋が順番に開錠され、一人ずつ布団を押し入れに戻しに行く。…

地下室の手記 5枚目

牢屋の中はトイレを含めて4畳の畳張りであった。誰もいない1号室に案内された。 留置場は洗面台を中心にやや扇形に6つ配置され、部屋番号は4以外の1~7まであった。 犯罪を犯した人に対しても、縁起を気にしているのだろうか。 牢屋に案内される前の身体検査…

地下室の手記 4枚目

深夜取り調べを受けていた。 しかし、正直その時の話はあまり覚えていないし、事件に突っ込んだ話はしていなかったように思う。私のプロフィールを作成することが第一目標なのだろう。彼女との関係くらいは話したかもしれない。 1時間くらいで一通りの調書を…

地下室の手記 3枚目

警察署に着くと取り調べが始まった。 眼鏡をかけた男性で、私の中学の時の友達に似ていた。高圧的な態度は無く、私も普通に受け答えすることができた。 予め黙秘権についての説明があり、答えたくない質問は答えなくて良いという話をされた。これは今後の取…

地下室の手記 2枚目

警察は早朝に来るという話を聞いたことがあるが、私の場合は深夜だった。 自宅で手錠を掛けられた私は、警告灯のついていない警察車両に乗り、深夜に警察署に向かった。最後部に乗せられ、両脇に二人の警察官、前に1人、運転席に1人。 移動中、速度制限50k…

地下室の手記 1枚目

昨年の話である。夜中の事だった。 午前1時になろうかとする時に、玄関のベルが鳴った。 こんな夜中に?誰が? インターホンの画面には知らない女性が1人だけで立っていた。 私には数年お付き合いしていた人がいたが、その女性は彼女では無かった。 「○○(…