地下室の手記

獄中日記

地下室の手記 7枚目

「運動の時間だよ」

 

そう言って警察官は施錠されている檻を開けた。

 

運動と言われても運動をする様なスペースも無ければすることもなかった。

聞いてみると、裏口のような場所に出て運動をするらしい。

 

運動は何をすればいいのかと頭の悪い質問をしたが、返ってきた答えも頭が悪かった。

 

「爪切りとか、髭剃りとか」

 

どこが運動なのだ。もっとこう、あるだろう。

 

その裏口の様な場所に出てみると、12,3畳程度の場所に茣蓙が敷いてあった。日差しは入ってくるが、上部には格子が嵌め込まれており、脱出はできない。

 

確かに、個人で簡単な体操くらいはできるかもしれないが、それは別に室内でできないという訳では無い。

勝手な解釈をするならば、外に出て新鮮(かどうかはわからないが)な空気を吸って体操をしたり、ゴミが出る様な爪切りや髭剃りもまとめてしてくれということらしい。

 

髭剃りは2つあり、使った後はアルコールで拭いて元に戻す。この時には例のちり紙が使われた。私は爪を噛む癖があるので爪切りは一切使わなかった。幾つあるのかも知らない。

 

先客が1人。髭を剃っていた。

茣蓙から立ち上がって、体を捻っている。

 

私は社交的ではないので、自分から話しかけることは無かった。

25分という持ち時間が与えられているが、私は簡単に髭を剃って5分程度で部屋に入った。

 

前の人が使ったアルコールのせいか、口の周りがひりひりした。