地下室の手記 4枚目
深夜取り調べを受けていた。
しかし、正直その時の話はあまり覚えていないし、事件に突っ込んだ話はしていなかったように思う。私のプロフィールを作成することが第一目標なのだろう。彼女との関係くらいは話したかもしれない。
1時間くらいで一通りの調書を作成した。
あまりパソコンを打つのが上手とは言えない人で、タイピングに時間がかかっていた。
調書を作成し終わると、その場で印刷された物を渡され、読まされる。
内容に誤りがあったり、この書き方が嫌だというのがあるのなら訂正するので言ってほしいと言われた。特に誤りは無かったので大丈夫ですと答えた。
そしたら調書の最後に自分の署名を行い、調書全てに黒い印鑑の様なものを用いて指印をさせられる。
その後は別室にて自分の写真や指紋(手のひらや側面も含める)を取られる。
また、ガーゼを用いて自分の口内から唾液を取る。DNA鑑定に用いるものだろう。
この時自分が犯罪者として記録されていることを強く実感した。
指印を押すごとに、写真を撮られるごとに、自らに犯罪者の烙印を押していくような感覚があった。
深夜帯であまり慣れていない人が行ったせいか、指紋や写真を撮るのにかなりの時間がかかった。
待っている時、別の警官が話しかけてきた。
「もう彼女と連絡を取ってはいけないよ」
私は頷いた。心の中では首を横に振った。
私には彼女に聞かなければならないことがある。
話さなければならないことがある。
どうしてこうなったのか。
仲直りしたはずではなかったか。
来週会って話すのではなかったのか。
何故彼氏を警察に突き出すことができるのか。
そもそもこの原因は何だと思っているのか。
まだやり直せると、当時は思っていた。
今はもう難しいことは分かっているし、そのつもりもないが。
その後小さな医務室のようなところで所持品を警察官に預け、服装のチェックをする。
私はジャージが破れていたので、着用は認められなかった。
そのため代わりの物をもらい、脈拍などを測り、説明を受けた。
「私たちはあなた達をサポートするものです。困ったことがあれば聞いてください。」
そのように警官が言った。先ほどの取り調べの様な雰囲気の人では無かった。
深夜3時を回っただろうか。私は監獄に入った。長く短い夜だった。